フルートのレッスンにいらっしゃる熱心な生徒さん
今日のお悩みは右手薬指と小指の動きの問題。(便宜上、指の名前を親指から小指に向けて、1~5の番号を振っておきますね)
・4は上げにくいし抑えにくい。動きがほかの指のように速く動かない。
・5と4の交互の動き(クロスフィンガリング)が思うようにいかない。
・そもそも、楽器演奏だけでなく、4,5は一緒に動きたがる。
練習曲をレッスンする間に、このお悩みからくる問題が起きていることに気づきました。
私も、以前は悩んでました。
鍛え方が足りない、そもそも、鉛筆持つのも、お箸持つのも、何かつまむのもいつも1~3の指で行っているわけだから、4,5の指は動きに慣れていない、だったら鍛えなきゃ。
トリルや4,5を特に取り上げるパッセージをムキになってやったりしてね。
でもね、そもそも
4,5の動きの鈍さや、つられて動くことは当たり前なことなのです!
いいんです。だって、ほら、この手の骨、見てみてくださいな。
指の根もとつまり、手首には小さな骨が8個、4個づつ2列に並んでいますが、1~3の指には1つづつ、それぞれにつながる骨があるのに、4と5の指に直接つながる骨一つだけ!
それぞれの指の骨にはそれぞれを複雑に動かす筋肉が付着しているのですが、なぜか、ここだけ、一緒になっています。
なぜそうなのか、詳しいことはわかりませんが、1~3の指は繊細な動作を担当します。
4,5は一緒になって、力のいる仕事ができます。
瓶のふたを開けたり、ぞうきんを固く絞ったり、握りしめて何かをする動作は3,4の指が力を合わせて大活躍していますよね。
おっと、申し遅れましたが、てのひらというのは指の途中なんですね、この写真でいうと、針金が見えるあたりよりさらに先端に近いほうが表面的には指の付け根に見えるところですが。中手骨という指の骨があるところがてのひら。まだ指の途中です。
1~5それぞれの指で働きが違うのですね。
4と5は一緒になってパワーを発揮しますからきっと付け根の骨が一緒のほうがいいのでしょうね。
神様は楽器演奏のことを考えて設計してくださらなかったんですね。
「だから、一緒に動いてあたりまえ、いいんですよ。1~3の指のように繊細に動かないのも当たり前なんです。」と、我がレッスン室の主、骨格標本(等身大)の透(とおる)くんの手をお見せしながら説明をしました。
そして、もう一度苦手なパッセージをやってもらいました。
すると、なんということでしょう!
前よりもスムーズに指が動くではないですか!特に4の指がとても楽そうに。
一緒に動いていい、と言っただけで、逆に別に動く指使いが滑らかに。
これは、どういうことかな
実際に指を動かすのはこの骨だけでなく、腕のほうまでつながる骨、それにくっついている長い筋肉や指の小さな骨一個一個につながる複雑な筋肉、腱、などが関係しているのでもし、指を動かす仕組みをお知らせするなら話はここからなんだけど、とりあえず、よくなったので体の仕組みのお話はここまで。
あとは、自分のために,
どうしてうまくいったのかを後で考えてみました。
それは、4と5は一緒に動いていい、と、「自分を許した」からではないでしょうか。
それまで、どんなに努力してもうまく動かない、どうして隣の3の指のようにうまくいかないの!? 頑張れ4と5!!って思っているときには、いろいろなところ、腕やほかの指、背中や首、といったところが頑張れがんばれと力を入れていたのではないかと思うんです。
残念ながら、後で気づいたので、その時のご本人の力の入れ具合を確認することはしていませんでしたので、推測ですが。
「自分を許す」ということは、決してあきらめる、とか、妥協する、ということではないのです。
この場合では、4と5はほかの指と同じように動かなくてもいい理由の事実(解剖学)に基づいた説明を聞き、腑に落ちたのだと思います。
その結果、根性論でカバーしようとしていた考えを改めたとき、無駄な力が抜けたのだと思われます。
何か得体の知れない壁が目の前に立ちはだかったとき、やみくもに立ち向かう方法もあるかもしれません。それはそれで、後の財産になったりします。(私くらいの年齢になりましたらない話ですね)が逃げたくなったり、つらくなったり、ネガティブ思考が目の前にちらつくこともよくあります。
その時です。
逃げたっていい。それも一つの方法だよ、と自分に許可をだしてみると、何か、ふっと力が抜けるときありませんか。そして、そもそも、この壁、ほんとに壁なの、正体は?開き直りにも似た感情から、冷静に分析することができ、壁と思い込んでいたことも、いくつもの事実を積み重ねていくと、実はうすーい壁だったり、実は壁じゃなかったりすること、ある気がします。
レッスンの生徒さんから思わぬプレゼントをいただいた気がして、なんだか、勇気が出てきました。
あ、でも、実際に指を動かす分析はできていませんから、また、後日探求したいと思います。夏休みの宿題にしよー